| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W02-2  (Workshop)

群集構成と気象変動の組み合わせで決まる訪花者の応答多様性と相補性効果
The combination of community structure and environmental change determines response diversity in pollinators and its complementarity effects

*夏目佳枝, 宮下直(東大・農)
*Kae NATSUME, Tadashi MIYASHITA(The Univ. of Tokyo)

生物多様性が生態系機能を高め、安定化する効果の基底となるメカニズムの1つとして応答の多様性(Response diversity: RD)が提唱されている。応答の多様性は種間で環境への応答が異なる状態を指し、相補性効果を通じて機能を強化するが、その効果は状況依存的であることがいくつかの実証研究から示されている。この状況依存性が生じる背景には、群集構成に起因する要因と環境変動パターンによる要因の2つが挙げられる。このうち前者は優占種も含め種の固有性による効果として理解されているが、後者に起因する状況依存性はほとんど調べられていない。
動物による送粉サービスは作物種の75%に恩恵をもたらしている。送粉サービスの変動気象下でのレジリエンスを高めるには、送粉者のRD効果を理解する必要がある。本研究では、気象変動と送粉者群集構成がRD効果にどのように影響するか明らかにする。具体的には、ソバの送粉サービス量と安定性が、1)環境変動幅が大きい場合ほどRDによって高まること、2)特定の種の在不在によりRD効果が変化すること、の2つを、実際の群集構成と気象への応答、気象変動を使った数値計算により検証する。
3分間あたりの訪花数を応答変数とし、時間、風速、二次項を含む気温を固定効果の説明変数とした一般線形混合モデルを分類群ごとに構築した。これに調査した季節・地域による種内変異を考慮するため、気象との交互作用を含めたモデルでΔAIC及び相対重要度の値をもとにモデル選択を実行し、モデル平均により気象応答を推定した。各調査点の群集構成は、分類群の訪花数最大値により決定した。
上記のモデルを使って、過去の気象データから想定される送粉サービス量と変動性を推定した。応答の多様性の効果を定量化するため、実際の応答の場合に加え、群集内で応答が一様な場合でも同様の計算を行った。これら2つの場合の差をRD効果とし、これが環境変動と群集構成の違いでどう変化するかを検証する。


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