| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W02-3  (Workshop)

栄養段階を超えた生物間相互作用から生物多様性効果を評価する
Assessing biodiversity effects based on biotic interactions across trophic levels

*西村一晟(横浜国大), 橘太希(横浜国大), Lu XIAOMING(Chinese Academy of Science), Zhao XUEZHEN(Chinese Academy of Science), 内田圭(東京大学), Bai YONGFEI(Chinese Academy of Science), 佐々木雄大(横浜国大)
*Issei NISHIMURA(Yokohama National Univ.), Taiki TACHIBANA(Yokohama National Univ.), Lu XIAOMING(Chinese Academy of Science), Zhao XUEZHEN(Chinese Academy of Science), Kei UCHIDA(The Univ. of Tokyo), Bai YONGFEI(Chinese Academy of Science), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

生物多様性は世界的に急速に減少しており、種の喪失は生態系機能を損なう可能性がある。こうした背景から生物多様性と生態系機能の関係性(BEF; Biodiversity and Ecosystem functioning)の検証が取り組まれてきた。多くのBEFの検証によって、一般的に生物多様性は生態系機能を向上させることが示唆されている。
生物多様性が生態系機能を向上させるメカニズムとして、種間のニッチ相補性に基づく資源効率利用や促進作用による相補性効果と機能が高い種の優占による選択効果が考えられている。相補性効果と選択効果の相対的な重要性を検証する生物多様性効果の研究は、BEF分野における主要トピックの1つであり、生物多様性がどのような機構で生態系機能を向上させるかの理解を深めるために行われてきた。近年の生物多様性効果の研究では、相補性効果と選択効果に関連するニッチや競争能力を反映する機能形質を用いた検証が取り組まれている。例えば、既存の研究では、種間のニッチ相補性に基づく相補性効果は機能的多様性(群集内の機能形質値のばらつき)が大きいと高くなり、優占に関わる選択効果は植生高などの特定の機能的組成(群集内の機能形質値の加重平均値)と関係性を持つことが示唆されている。
このように生物多様性効果の研究は行われてきたが、既存の研究の多くは対象とする生態系機能を計測のしやすい地上部生産性としており、他の生産性からはかれる生態系機能における生物多様性効果の理解は浅い。また、近年のBEF研究において重要とみなされている複数栄養段階における生物多様性や生物間相互作用が生物多様性効果とどのように関係するかについても不明瞭である。
そこで、本講演では、複数栄養段階の生物多様性・生物間相互作用を組み込んだ生物多様性効果の研究における新展開について、議論する。一例として発表者が検証した送粉相互作用に基づく種子生産性への生物多様性効果を紹介した後、今後の展望を述べる。


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