| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W16-4  (Workshop)

群集全体にもたらされる人為攪乱 ~農薬が水田生物間の相互作用を変える~【B】
Community-wide anthropogenic disturbances: pesticide applications modify interactions among aquatic community members in rice paddies【B】

*橋本洸哉(弘前大学, 国立環境研究所)
*Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ., NIES)

一般に、生物間相互作用によって群集の構造・動態・多様性を説明することを目指す研究には、少数の種を対象にした操作実験と、多くの種の集合である野外群集の調査・記載という両極のアプローチが存在する。前者は個別の相互作用の実証力は高いが、その相互作用が現実の群集でどれほど重要なのかには答えられない。一方、後者で得られるデータは自然界のあらゆる要因の作用の結果生じたものであり、得られたデータと個別の相互作用との因果関係を証明するのは困難である。こういった両極それぞれの弱点を克服するためのアプローチとして、模擬生態系などの閉鎖系・半開放系における群集を対象に操作実験を行う方法が挙げられる。この方法では、操作するのに手ごろな空間的大きさの群集に対して、生物の追加・除去といった操作を行うことで、操作した要因が相互作用を介して群集全体に波及する効果の存在を実証的に明らかにできる。さらに近年、非線形時系列解析によって、群集内の生物密度の時系列データのみから生物間の相互作用の存在やその強さを推定する手法(Empirical Dynamic Modeling: EDM)が発展の途上にある。こうした研究の発展により、相互作用と群集との相互関係を探るためのアプローチの選択肢は増えつつある。本発表では、農薬が水田の水生生物群集に与える影響を、模擬生態系を用いた操作実験によって検証した研究を紹介する。また、この実験のデータにEDMを適用したことによって見えてきた相互作用と群集との相互関係を議論する。


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