| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W06-4  (Workshop)

日本における外来種対策の現状と展望:アセスメントで得られた知見をどう活かすか【B】
Current status and future prospects of invasive alien species management in Japan: how to move forward based on the assessment?【B】

*池田透(北海道大学)
*Tohru IKEDA(Hokkaido Univ.)

 2023年9月4日にIPBES侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価の政策決定者向け要旨(SPM)が世界一斉に公開された。この評価は、49カ国86人の専門家によって13,000本にわたる文献をベースに4年半の年月をかけて実施され、世界の侵略的外来種に対する最も包括的な評価となっており、この評価を今後の防除にどのように活用していくかが各国に課せられた課題となる。
 日本の侵略的外来種防除は、近年では根絶達成事例も得られてきたが、局所的分布種では成果が上がっているものの、広域分布種においては苦戦を強いられている。その原因には、対象外来種の生態的特性による問題もあるが、外来種問題が一次産業への被害問題としてのみ認識され、国民に自分自身の問題として捉えられていないという社会的背景の影響が大きいと考えられる。
 今回のSPMでは、Biological Invasionsという侵略的外来種が発生するプロセスの理解から侵略的外来種への焦点化を試みていることが大きな特色となっている。物資や人の「輸送」によって生物が自然の生息域外に「導入」されることで在来種が外来種となり、世代交代が可能な個体群の「定着」によって定着外来種が生まれ、環境に適応して「拡散」し、生物多様性や生態系サービス、自然の人々への貢献,及び生活の質の向上へ負の影響を与えるものが侵略的外来種へと移行する。
 このプロセス及び影響を与える変化要因を理解することで、侵略的外来種の発生には人間活動が複雑に関係していることを理解し、外来種問題を自身にも関係のある問題と認識を改善できることが期待される。
 本発表ではさらに、侵略的外来種の影響及び管理手法を整理することから、今後の侵略的外来種防除の方向性を探る。


日本生態学会