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一般講演 A3-02

サンゴ礁沿岸浅場の微小景観構造とカクレクマノミの生息地評価

*服部昭尚(滋賀大・教育・理数情報)

水深1m程度までのサンゴ礁の岸辺(潮下帯)では,礁縁などと比べてサンゴ群落が少なく,さらに埋め立てやすいため,すでに多くの場所で部分的な埋め立てが進行し,潜在的に良い場所に多くの種が生息しているとは限らないのが現状である.このため,優先的に修復や保全の努力がなされるべき場所を,現在の生息種に基づいて指摘するのには限界があるだろう.むしろ、景観の微細構造に注目して「潜在的に良い場所」が検出可能であれば,保全や修復活動に良い結果がもたらされるはずである.さらに,旗艦種の生息場所と景観構造を関連づけることができれば、より効果的であるかもしれない.

本研究では,石垣島白保サンゴ礁の岸辺(潮下帯)において、約2.9haの観察区域を設定し,ダイバーなどに人気の高いカクレクマノミとハタゴイソギンチャクを対象に,景観の微細構造と生息地の質(対象種の個体の生存率)を3年間にわたり調べた.拡大空中写真に画像処理を施して底質カテゴリーを明確化して,全個体の分布をカテゴリー別に記録した.画像解析ソフトの「ポスタリゼーション機能」を用いることにより,観察区域全体の面積の12%まで潜在的生息地を絞り込むことができた.さらに,生息密度は少ないものの生息地として質が高いカテゴリーを検出することができた.一般に,水深1m程度のサンゴ礁の岸辺は,比較的単調な景観であり保全価値が低いものと考えられがちである.しかし,本研究により,生息地の異質性を生息地の質の差とともに明確に示すことができた.野外調査と画像解析の併用は,リモートセンシングとは異なり,景観の微細構造と小型種の生息状況を対応づけることができるため,サンゴ礁に限らず,沿岸浅水域での「潜在的に良い場所」の抽出に幅広く応用できるだろう.

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