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一般講演 A3-08

維管束植物の絶滅リスク評価ーレッドリスト掲載種判定のためにー

*宗田一男(横浜国大・院・環境情報),藤田卓,矢原徹一(九大・理),松田裕之(横浜国大・院・環境情報)

野生生物の大量絶滅に関する問題に注目されるようになってから、絶滅の危機に瀕している種をリスト化し(レッドリスト、以下RL)、著作物として著す(レッドデータブック、以下RDB)世界的な動きがある。日本では、過去に2度維管束植物のRDBを作成した。特に、環境省編(2000)(以下、維管束植物RDB)では、絶滅リスクに基づく定量的判定を積極的に利用した。そのRDBが出版されてから既に5年以上が経過し、2007年3月に改訂版RLを公表するための作業が進められている。本研究の目的は、改訂版RLの掲載種判定の基礎となる絶滅リスクを算出し、さらに持続可能に今後のRL調査を行うための示唆を行うことである。

改訂版RLのための調査(以下、見直し調査)では527名の調査員の協力のもと、2万5千分の1地形図(以下、メッシュ)ごとに約1950種の株数と10年間の減少率を調査した。

調査結果に基づき、維管束植物RDBで用いたモンテカルロシミュレーションとほぼ同様の方法を用いて調査対象種の絶滅リスクを算出した。算出された絶滅リスクを基に、日本植物分類学会の委員会で協議が行われ、レッドリストカテゴリー(絶滅危惧の程度)が最終的に決定された。情報が十分に揃っている種については、概ねシミュレーション結果が採用された。

しかし、見直し調査で用いられた調査方法は、調査員に多大な負担をかけるという問題点がある。従って、今後のRL調査を継続して行っていくためには、調査努力の軽減が課題である。私たちは、この課題の解決方法として、従来のようにメッシュ毎に株数を調査するのではなく、メッシュごとの現存/絶滅のみを調査することを検討した。本発表では、そのような調査努力を軽減した場合のシミュレーション結果の信頼性などについても報告する。

日本生態学会