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一般講演 C1-09

マコモの生育基盤およびハクチョウの摂食がマコモの成長に与える影響

*岩淵 藍子,中野 和典,千葉 信男,野村 宗弘,西村 修(東北大院,土木)

一級河川白石川では,ハクチョウの餌となるマコモの地下茎を供給するため,毎春マコモの植栽を実施している。しかし,植栽を行うことは人間の都合にその継続が左右されることや多大なエネルギーを要することから,効率的かつ効果的な植栽方法や管理方法を構築することが必要であると考えられる。そこで,本研究では,マコモの生育基盤をコントロールすることで,地下茎の生産量およびハクチョウの摂食量を増加させられるのではないかと考え,その機構を解明することを目的とした。

マコモの生育基盤厚さを12kgf/cm2以下と定義し,マコモの植栽場所のうち基盤厚さの異なる2つの区画(基盤厚・小,大)において,ハクチョウによる地下茎の摂食量と,摂食後の地下茎の生産量を測定した。その結果,両区画で地下茎はほぼ100%摂食されており,生育基盤厚さによる摂食率の偏りがないことが分かった。地下茎の生産量は,基盤厚・大では基盤厚・小よりも地下茎の伸長が空間的に制限されないために大きくなると予想した。しかし,予想に反して結果は基盤厚・大で小さくなった。そこで,地下茎の伸長を制限する別の要因として浮きマコモの取り込みによる株の大型化に着目したところ,基盤厚・大は浮マコモが漂着し取り込みが行われやすい環境であった。このため株は大型化しており,地下茎の伸長可能な深さは小さくなった。これらから,基盤厚・大では株が大型化し地下茎の伸長が空間的に制限され,地下茎の生産量も制限されることが分かった。

以上より,地下茎の生産量およびハクチョウの摂食量は生育基盤厚さで異なることが分かった。また,地下茎の生産量を増加させるためには株を大型化させないことが重要であるため,この点に着目することで,今後はより効率的かつ効果的なマコモの植栽や管理が可能になると考えられる。

日本生態学会