| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 C1-13

個体群動態モデルを用いた地域別管理の提案

*太田碧海(横国大院),松田裕之(横国大院),立澤史郎(北大),高橋裕史(森林総研),常田邦彦(自然研)

全国的にシカの増加問題が顕在化しているが、屋久島もその例外ではなく、農業被害防除および生態系保護のために個体群管理が必要だと考えられる。ヤクシカは、西部地域では43-78頭/km2(Agetsuma et al. 2003)と著しい高密度で生息しているが、生息密度は地域によって異なる(立澤ら、未発表)。そこで本発表では、ヤクシカの地域別個体群動態を予測し、地域によって捕獲努力を分散させる管理手法を提案する。

まず、屋久島をシカの生息密度により、生息密度が高い西部、現在密度が増加傾向である北東部、低密度である南部の3地域に分けた。尾根よりも川と沢がシカの移動を妨げると考えられることから、地域の境界は集水域でなく、川で区切った。差分方程式によるモデルで現在より10年間の地域別の個体数推移を表し、現在の半数になることを目標に捕獲数を推定した。捕獲数は、各地域の前年の個体数を5段階に振り分け、捕獲圧として段階に応じて決定した。捕獲はまだ生態系に大きな影響の出ていない北東部と南部で行うこととした。

順応的管理に基づく捕獲数調整としては、推定誤差(0.5-2.0倍)を考慮すると、初期に95%信頼区間で北東部900-2400頭、南部150-400頭の大量捕獲を行えば、8年目以降の捕獲数は北東部で200-500頭、南部50-100頭と安定した。現在を1としたときの個体数指数は北東部0.44-0.38、南部0.48-0.40となった。現在屋久島で行われている捕獲は年300-400頭程度である。この規模では、捕獲を南部にだけ集中すれば南部のみ個体数が抑えられるが、全島の個体数については増加を抑制することはできない。

日本生態学会