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一般講演 C3-01

淀川におけるブル−ギルの食性

*内藤 馨,平松 和也(大阪府水生生物センタ−)

ブル−ギルは,生活史の中で最も危険である卵や仔魚の時期を雄親が保護する習性を持ち,かつ広範な雑食性である。そのため,様々な環境への適応性も高く,繁殖力も旺盛なことから,一度侵入すると急激に個体数が増加する。本種は1960年に日本に移入され,淀川では1970年代に生息が確認された。淀川の本流,ワンドを含めた全域調査の魚類組成の中で,1980年代に0.37%に過ぎなかったものが,2004年の調査では21.8%と淀川の魚類組成の1位を占めるに至った。このことから,淀川の在来魚に対する卵の食害や餌料の競合等の影響が懸念される。しかし,本種の食性は生息環境によってかなりの変異が予想され,その食性を数値化している研究は少ない。

本研究では,淀川の本流6地点,ワンド5地点において,地曳網で採捕したブル−ギルの食性について調査し,餌料重要度指数(IRI)によって本種が利用している餌料の重要性を判定し,その在来水生生物に及ぼす影響について評価することを目的とした。

生息環境の違いによる比較では,本流はユスリカ幼虫・サナギ,ケンミジンコ類,カゲロウ類幼虫,ワンドは魚卵,ケンミジンコ類,水草類,ユスリカ幼虫・サナギの重要度が高い結果となった。季節ごとにみると,ワンドで各種魚類の産卵期である4月に魚卵の重要度が高く,その他の時期は本流,ワンドともユスリカ幼虫・サナギが高い重要度を示した。全体を通してみると,水生昆虫類,陸生昆虫類,甲殻類,オカダンゴムシ,ムカデ類,イトミミズ,貝類,水草類等を捕食していたが,ユスリカ類,魚卵の餌料重要度が高い値を示した。この結果,本種が淀川においても本流,ワンド,季節変化等多様な生息環境に順応し,多種類の生物を捕食し,従来の生態系に影響を与えていることが明らかとなった。また,成長の悪い個体が多く,生息密度に対して,餌料不足と推測された。

日本生態学会