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一般講演 D1-11

琵琶湖北湖沖合における溶存酸素動態−酸素安定同位体比を用いて

*陀安一郎(京大・生態研セ), 由水千景(JST), KIM Chulgoo, 槙洸, 西村洋子(京大・生態研セ), 後藤直成(滋賀県大・環境科学), 永田俊(京大・生態研セ)

水域において、溶存酸素の動態は水生生物の生存に影響を及ぼし、溶存酸素濃度の低下は生物群集に大きな危機を引き起こす可能性がある。琵琶湖北湖では、近年深水層における年最低溶存酸素濃度の低下傾向が懸念されているが、溶存酸素動態の詳細は分かっていない。そこで、溶存酸素濃度および溶存酸素安定同位体比(δ18OHLA)を用い、琵琶湖の溶存酸素生成−消失機構を研究した。溶存酸素同位体比は、大気との交換より供給・放出される酸素、光合成により生産される酸素、呼吸により消費される酸素により決定される。

調査は、琵琶湖北湖近江舞子沖の定点(水深約70m)において2003年12月より2007年3月までおおよそ月一回の間隔で行なった。いずれの年も循環期には酸素同位体比は大気平衡に近い値になったが、その期間においても深度別に小さな酸素同位体比の変化があり、溶存酸素同位体比は循環の程度を表す鋭敏な指標となることが分かった。成層期に表水層では、光合成により湖水より生成された酸素(琵琶湖湖水の酸素同位体比δ18OHLA= 約-30‰)の混合により、酸素同位体比は低くなった。呼吸による同位体分別係数αrを用いてモデル計算を行うと、表水層での酸素生成/消費の比の年間変動が明確になった。一方深水層では、成層期に湖底直上層および水温躍層直下から酸素同位体比は高くなり、その後循環期にかけて大気からの溶け込みおよび光合成により酸素同位体比は低くなったが、年によってそのパターンは異なった。

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