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一般講演 E3-07

Filteration capacity of Unionids: re-evaluation from an ecosystem functioning perspective

*JN Negishi (PWRI, Aqua Restoration Research Center), I Katano (PWRI, Aqua Restoration Research Center), Y Kayaba (PWRI, Aqua Restoration Research Center)

わが国には約17種のイシガイ科淡水二枚貝(イシガイ類)が生息していると報告されている。底生動物相の中では大きな生物量を持つことや、ろ過食者であることから、イシガイ類は重要な生態的機能を担っている可能性がある。また現在、イシガイ類の多くに関して生息場所環境の改変・悪化に伴う生息数・範囲の減少が各地で報告されており、その保全には生息好適環境の特定および潜在的な生態的機能の評価が求められている。本研究では、イシガイ類4種が生息する農業用排水路(2箇所)を対象とし、全個体捕獲により正確性を確認した手法を用いて生息密度を測定し、さらに室内実験により個体サイズ別の濾水速度を推定した。これらの数値を流量に対して検討し、調査区間の個体群が濾水を通して物質循環に与える影響の程度を数値化した。総生息密度(1m2あたりの4種合計個体数)は水路2箇所においてそれぞれ4.9および3.6と算出された。濾水速度を濾水能(単位時間あたりの濾水量)に変換すると4種すべてに関して個体の体サイズと有意な正の相関が見られた。4種の平均濾水能は、平均体サイズ(長軸殻長約53mm)の個体に関して約7 ml min-1であった。体サイズと濾水能の関係を採集個体群に適用すると、各水路の単位長あたりのイシガイ類による濾水能は1.6 および3.6 ml sec-1 m-1と算出された。これらの値を調査区間の流量に対して評価すると、農繁期の流量に対する濾水能は微量であるが(<5%)、非農繁期では比較的高い(10-20%)ことが明らかになった。

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