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一般講演 F1-08

ナガエノスギタケの発生に基づく本州中部でのモグラの営巣生態

*中井真理子(富山大・理),横畑泰志(富山大・理),橋屋 誠(富山県立中央植物園),相良直彦(元京都大院・人間・環境学)

地中にあるモグラの巣の位置は、地表からは直接特定できない。その発見にはモグラの排泄所跡に生えるキノコの一種、ナガエノスギタケ(Hebeloma radicosum)の発生に基づくか、ラジオテレメトリーによる追跡が必要である。

本研究ではナガエノスギタケの発生に基づき、富山県南砺市福光、同市福野、岐阜県飛騨市打保、滋賀県大津市龍谷の森、京都府京都市清水山の山地またはその付近で巣の発掘を行い、すべての場所でモグラの巣を得た。富山県・岐阜県下でのナガエノスギタケの発生に基づいたモグラの巣の発掘は、本報告が初めての例である。さらに、富山県富山市下条の平地の水田の土手でモグラの採集中に偶然発見された巣についても発掘を行った。

居住者であるモグラの種同定は、巣内部や巣底土から見つかった脱け毛表面の鱗片形と巣周辺の坑道径、日本のモグラ類の分布を総合して行った。巣の居住者は富山県の3例がアズマモグラ(Mogera imaizumii)、滋賀県、京都府の例がコウベモグラ(M.wogura)であり、岐阜県の例はミズラモグラ(Euroscaptor mizura)のようであった。

発掘された巣は乾燥した落葉(山地とその付近)、または稲藁(平地の水田畦)を巣材として、それらを何層にも重ねたほぼ球形のバレーボール大のもので、出入口は一つだけであった。また、山地やその付近ではすべての場所で巣の直下に細い坑道が存在したが、平地の巣の直下にはそれらしき坑道は見られず、周囲の水位との関係が示唆された。さらに、平地の巣の周辺には排泄所跡を見つけることができなかったことから、平地の水田では巣と排泄所の位置関係が山地などとは異なる可能性がある。

日本生態学会