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一般講演 G3-09

遺伝的に異なる系統が存在する北海道マイマイガにおける遺伝子流動

*山口博史, 渡辺崇, 塚越英晴, 時下進一, 山形秀夫, 東浦康友 (東薬大・生命)

北海道に生息しているマイマイガは本州とは別亜種であり、ミトコンドリア DNA (mtDNA) による解析でも約 100 万年前に分岐したと推定されている (Bogdanowicz et al. 2000)。しかし、我々が北海道全域でマイマイガの mtDNA を調査したところ、遺伝的に北海道固有の系統以外に本州と同一の系統も存在していた。これら遺伝的に異なる系統は札幌市付近の石狩低地帯を境界として東西に異所的に分布しており、石狩低地帯では2系統が混生個体群を形成していることが明らかになっている。また、混生個体群では雌の子のみを産む雌、及び雄の子のみを産む雌が確認されている。我々は上記のような性比異常の原因は、Goldschmidt (1934) の亜種間交配実験に基づいて、遺伝的に異なる系統間におけるハイブリッドが原因で引き起こされる交配後生殖隔離の一種であると考えている。しかし、mtDNA では母系統の推定しかできないため、マイクロサテライト (SSR) を用いて北海道マイマイガにおける遺伝子流動を解析している。

本州の青森県三沢市及び純粋な北海道亜種であると考えられる北海道中川町、混生個体群である早来町と札幌市小金湯においてフェロモントラップにより捕獲したマイマイガの SSR を現在解析中である。性比異常の原因が遺伝的に異なる系統間の交雑によるならば、核遺伝子の流動は mtDNA の場合とは異なる挙動を示すものと考えられる。さらに、mtDNA では検出することができない、遺伝的に異なる系統間における核遺伝子浸透の地理的な範囲を推定する。

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