| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 G3-10

白樺湖におけるカブトミジンコの系統解析

*渋谷浩之,小林拓,時下進一,(東薬大・生命)坂本正樹,河鎮龍,花里孝幸,(信州大学産地水環境教育研究センター)太田敏博,山形秀夫,(東薬大・生命)

ミジンコ類は食物連鎖上、消費者と生産者の境界に位置するため、生態系の維持において重要な生物といえる。大型のミジンコ類は微細藻類の捕食効率も高く、水質改善を目的とするバイオマニュピュレーションにとって有用な生物と考えられる。信州大学の花里らは日本において優占種であるDaphnia galeataを単一クローン化し、人工湖である白樺湖に放流し水質改善を行っている。本研究では、人為的に放流した D. galeata の白樺湖への定着を調べる目的で、現在の白樺湖における個体群組成の解析を行った。まず、単一クローン化したD. galeata(霞ヶ浦より採取:D. galeata K)のmt DNAの全塩基配列を決定した。雑種形成を解析するため、核ゲノムのリボゾーム遺伝子間配列中に存在する ITSの配列についても決定した。白樺湖の個体群組成の解析を解析するために白樺湖より採取した D. galeata をクローン化し、その ITS と mt DNA にコードされる CO I, CO III, Cyt B, ND I, 12s rRNA 遺伝子の部分配列を決定した。これらをD. galeata K のそれらと比較した結果、CO I と CO III 内に1塩基置換が認められた。また、 ITS の解析から、少なくとも D. galeata K の有する ITS を含む3種類の ITS が白樺湖の個体群中に認められた。このことから、白樺湖における D. galeataD. galeata K の単為生殖による個体群ではないことが明らかとなった。個体群形成には、異なる系統の D. galeata K による有性生殖が重要であると考えている。

日本生態学会