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一般講演 P1-001

ミゾゴイの繁殖生態 ―東京における繁殖事例から―

川名国男(一般)

ミゾゴイは、近年、激減していると言われている鳥であるが、その生態は明らかでない。特に、繁殖生態については、ごく少数が局地的に分布するため観察事例がなく、うっそうとした森で繁殖するなどの理由で、これまでに詳しい調査がされて来なかった。しかし、このまま放置すればミゾゴイは絶滅することが危惧される。現在、生息数の実態と繁殖生態を明らかにして、早急に生息環境の保全を図ることが緊喫の課題である。本事例では東京都あきる野市内において、2006年4月16日から同年7月15日まで3カ月間にわたって繁殖生態を観察した。この結果、一事例ではあるが、造巣、産卵、抱卵、孵化、育雛、巣立ちに至る繁殖生態の一面を明らかにした。

[結果]

造巣期間=14日間(2006年4月17日〜4月30日) 産卵期間=3日間(4月30日〜5月2日・1日毎1卵・計3卵) 抱卵期間=30日間(5月1日〜5月30日・1卵が孵化に要した日数28日) 孵化期間=3日間(5月29日〜5月31日・1日毎に1卵) 育雛期間=39日間(5月29日〜7月6日・1雛が巣立ちに要した日数37日間)巣立ち=7月5日〜7月7日(1日1雛3羽)

[考察]

繁殖環境は、民家に隣接したスギ・ヒノキなどの針葉樹、ケヤキ・エノキなどの落葉広葉樹、竹林が混生する湿潤な土壌の森林であった。採餌場所は、民家の裏庭、人の手が加えられた草地、アスファルト道路脇など人間の生活環境を共有していた。繁殖期間中の食物は、ミミズ類がほぼ100%であった。巣材の収集、親鳥・幼鳥の採餌行動範囲は、巣を中心に約1万平米内であった。これらのことから、ミゾゴイの保護に当たっては、一般的に言われている「里山の保全」と同時に、民家の空間を含む繁殖環境を局地的に保全することが重要であると思慮される。なお、今後も調査を継続して、生息数の実態と繁殖生態を明らかにしていきたい。

日本生態学会