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一般講演 P1-009

寄主植物の生育環境が、ヒメクロオトシブミの揺籃作成に与える影響

*水町衣里(京都大・農),小林知里(京都大・人環),大澤直哉(京都大・農)

ヒメクロオトシブミのメスは、樹木の葉を巻き、その中に産卵するという行動をとる。幼虫は、ふ化から羽化までの期間を、親が産卵時に作成した揺籃の中のみで過ごす。このため、親が揺籃を作成する場所をどのように選択するのか、どのような揺籃を作成するのかが、幼虫の成長に大きく影響すると考えられる。本研究では、寄主植物の土壌養分条件が、ヒメクロオトシブミの産卵行動に与える影響を明らかにすることを目的とした実験を行った。寄主植物としてはコナラを用いた。鉢植えのコナラ稚樹を72個体用意し、土壌の養分条件を2段階(養分Highと養分Low)に設定した。生育期間中に生産された全てのシュートについて、葉数とそのシュートに作成された揺籃数を記録した。揺籃は、作成日と作成場所(コナラの個体番号)を記録した後持ち帰り、生重量を測定した。採取した揺籃のうちの半数は、揺籃をほどいて、産卵数を確認し、揺籃として利用された葉の面積や乾燥重量などを測定した。残りの半数は、成虫が羽化するまで保管し、羽化成虫の性別、乾燥重量を記録した。ヒメクロオトシブミのメスは、産卵場所として、養分Highのコナラをより多く選んでいた。樹木の葉質は、土壌の養分条件によって変化することが知られており、メスが揺籃の作成場所や産卵数を決定する際に、葉質の違いを指標として用いている可能性が示唆された。作成された揺籃重量や羽化成虫の重量には、養分Highと養分Lowで有意な差は見られなかった。しかし、揺籃内の産卵数には、コナラの土壌養分条件が影響し、養分Highのコナラに作成された揺籃には、2個以上の卵が産みつけられている割合が高かった。これらの結果から、ヒメクロオトシブミの産卵行動に、葉質が関与している可能性が示唆された。

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