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一般講演 P1-017

繁殖移動と個体群の安定性

*仲澤剛史(京大・生態研セ),山村則男(京大・生態研セ)

繁殖移動のタイミングと個体群の安定性の関係を調べるため、数理モデルを構築した。消費者のOntogenetic niche shiftを組み込んだTakimoto(2003)の消費者−資源モデルを修正した。繁殖量と最大にするように移動タイミングが柔軟に変えられる場合にのみ、平衡点は局所安定であった。安定性の一般的な条件は、繁殖場所が採餌場所よりも安全で、採餌場所に資源が多いことである。この結果は、移動タイミングの適応的な可塑性だけではなく、餌の多い場所で採餌して安全な場所に繁殖移動するということも、個体群の安定性に寄与していることを示唆する。また、移動の遅れによる繁殖成功の低下や繁殖後の生存率は安定性に対して複雑な効果を与えた。採餌場所に餌が多い(もしくは少ない)とき、繁殖成功が僅かに(もしくは著しく)低下する場合や生存率が高い(もしくは低い)場合、平衡点は安定になりやすい。これらの結果は、移動する動物の生態学研究において重要な予測を与えるだろう。

日本生態学会