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一般講演 P1-031

個体群動態はどのスケールで安定化する?

*秋山耕治,西田隆義(京大院・農・昆虫生態)

近年、希少生物種の保全などに関連して、保全生態学的な観点からメタ個体群の変動・安定性が注目されるようになってきた。このメタ個体群の安定性については、局所個体群は不安定で時として絶滅を引き起こすものの、局所個体群間の移動・再侵入や、個体密度の変動周期の非同調性によってメタ個体群全体の動態が安定するという仕組みが考えられている。

では、どの程度の数の局所個体群が存在すれば、あるいは、どれくらいの空間スケールが確保されれば、メタ個体群の動態が安定するのだろうか。

我々は京都北山の百井川流域に生息するウスバシロチョウParnassius glacialisについて、一つ一つの微小な食草パッチ(局所個体群)から、近接するいくつかの食草パッチからなる小スケールのメタ個体群、多くの食草パッチを包含した大スケールのメタ個体群に至るまで、様々な空間スケールを想定した。そして変動係数を用いて個体群動態の安定度を評価し、その変動係数が空間スケールの拡大に応じてどのように変化するかを解析した。

その結果、本種のメタ個体群動態はある境界的なスケールサイズまでは不安定な状態から安定した状態へ急激に移行し、それ以降はスケールサイズを大きくしても安定度はさほど変化しない、すなわち、その境界的なスケールサイズにおいてメタ個体群動態の安定化がほぼ達成されているということが分かった。

日本生態学会