| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P1-041

real simulation of single species model

*中道康文(筑波大・生命共存),徳永幸彦(筑波大・生命共存)

寄主ー寄生者系の決定論的モデルに、個体毎に異なる成長速度を組み込むと、その結果が大きく異なることが分かっており、例えばNicholson-Baileyモデルでは発散するとされていたパラメータ領域でも、長期にわたり寄主と寄生者が存在することが確認されている。このように理論的研究では、仮定する条件によって結果が変化し、様々な結論が導き出される。では実際の生物の個体群動態を考える上で、これらの仮定をどこまで細かく設定すればよいのであろうか。そこで本研究では、個体の成長速度の個体差を考慮して構築された個体ベースモデルと同じ仮定の下で、実際の生物を用いた室内実験を行い、モデルの予測と実験結果を比較することで、理論的研究においてどの程度まで細かい仮定をおくことが妥当であるかを実験的に検証した。

検証の対象として、個体群動態の室内実験に広く用いられているヨツモンマメゾウムシの一系統(iQ)を用いた。あらかじめ、豆が80個の状態を仮定した決定論的モデルと個体ベースモデルを構築し、個体群動態のシミュレーションを行った。次に、実際にシャーレ内に80個の豆を入れ、雌雄10個体ずつのiQ系統の成虫を導入し産卵させ、24時間おきにシャーレ内を観察し、死亡している成虫を取り除き生きている成虫の数を記録した。新たに羽化した成虫が出てきた豆を取り除き、取り除いた豆と同数の新しい豆を導入した。

モデルのシミュレーション結果と実験結果との比較を行った結果、成長速度の個体差を考慮した個体ベースモデルは、実際のiQ系統の個体群動態をかなり正確に予測できていた。さらに成長速度の個体差を考慮していない決定論的モデルの結果とも比較し、理論的研究における条件設定の妥当性について考察を行う。

日本生態学会