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一般講演 P1-042

岐阜県白川村におけるツキノワグマの生息環境の選択性

*松本歩(岐阜大・応用生物),村瀬豊(岐阜大・クマ研),加藤春喜(トヨタ白川郷自然学校),中村幸子(岐阜大・大学院・連獣),鈴木透(EnVision),立木靖之(EnVision),浅野玄(岐阜大・応用生物),坪田敏男(岐阜大・応用生物)

岐阜県白川村は多くの原生的自然環境を残した場所で、ツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)本来の生息環境を評価するには格好の場所といえる。本研究では、白川村におけるツキノワグマの行動圏と植生との関係を調べ、ツキノワグマが生息するためにはどのような環境が必要か検討した。

白川村の馬狩地区でドラム缶式檻を用いて捕獲した2頭のツキノワグマ(オス、成獣)に首輪型電波発信器(ATS社)を装着し、ラジオテレメトリー法により追跡を行った。2005年6月10日から11月17日までの期間、週3〜5回の頻度で追跡調査を行った。得られた活動点は第5回基礎調査植生調査(環境省)の植生図と重ねあわせ、GIS (ArcGIS9, ERSRI社)を用いて解析を行った。

全調査期間を通じて得られた各個体の活動点は54点と44点だった。100%MCP法(最外郭法)を用いて推定した各個体の年間行動圏は13km2と10km2で、両個体とも6月から8月にかけ行動圏は拡大し、8月以降は縮小した。

テレメトリー調査の測定誤差を考慮し、活動点から半径500mのバッファを設け、そのバッファ内で行動していたと仮定し、植生毎の利用頻度を求めた。両個体ともチシマザサーブナ群落の利用が夏季になるにつれて減少し、秋季に再び増加した。夏季にはブナーミズナラ群落および自然低木群落、わずかだが伐採群落や造成地などの無立木地を利用していた。

これらのことは、岐阜県白川村のオス成獣ツキノワグマにおいて季節による生息環境の選択性の違いがあることを示唆している。

日本生態学会