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一般講演 P1-047

房総半島のニホンザル生息域の変動 −2006年アンケート調査から−

*岩崎亘典(農環研),デイビッド スプレイグ(農環研)

房総半島におけるニホンザルの生息範囲は、1970年代以降継続的に報告されている。最近では千葉県・房総のサル管理調査会(2003)による報告があるが、分布範囲は連続して拡大傾向にあるため、継続的な調査が必要である。さらに、過去の調査は群れの確認、被害の発生等の情報に基づくため、生息範囲は確認できるが、生息の有無、特に生息していない場所の把握は困難であった。そこで本研究では、房総半島中央部におけるニホンザルの生息の有無及び分布範囲をアンケート調査により明らかにすることを目的とした。

アンケートの配布対象地域は2003年に生息が報告されている地域及び周辺に5 km程度とした。配布対象は、標準地域メッシュの第2次地域区画を四等分してできる約5 km×5 kmの範囲に約五件ずつ、メッシュ内及び隣接するメッシュの間で配布対象に偏りがないように住宅地図を使って選択した。調査項目は、目撃の有無及び頻度と頭数、被害の有無及び品目と程度、目撃や被害が始まった時期とし、2006年9月〜10月にかけて配布、回収を行った。配布件数は207であった。

アンケート調査の回答数は64通で、回答率は30.9%であった。まずニホンザルの目撃の有無についてであるが、あるという回答が40件、ないという回答が22件、無回答が2件であった。ただし、目撃があったもののうち、出現頭数が1頭の場合が5件、出現頭数が2〜10頭で農作物被害がないものが2件含まれた。これらは実質的に群れの遊動域外と考えられる。以上から明らかになった分布範囲は、2003年の報告に比べ大きく拡大してなかった。ただし、君津市練木から木更津市草敷にかけて、目撃頭数が一頭ながら農業被害が生じている地域が報告されており、この地域では生息域が拡大していることも考えられる。

日本生態学会