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一般講演 P1-058

釧路湿原達古武湖における流域開発がマリモの生残に与えた影響

*安榮相(北大院・農), 若菜勇(阿寒湖畔EMC), 佐藤大樹(北大院・農), 中村太士(北大院・農), 高村典子(国環研), 中川恵(国環研), Arni Einarsson(Myvatn Research Station, Iceland)

達古武湖流域の開発による土砂堆積量の増加及び富栄養化がマリモ生息に与える影響を解明するため、湖底堆積物のコア試料を採取し土砂堆積速度を推定するとともに、炭素と窒素の安定同位体比による水質変化調べ、さらに堆積物中に残存するマリモの遺骸を測定した。

達古武湖の約300年間の堆積量を推定すると、1694〜1739年、1739〜1898年、1898〜1963年、1963〜2004年は、それぞれ226、196、1016、1354 tons/yrとなった。1898年以後は森林伐採や河川工事や農地開発の影響により土砂堆積量が増え、自然状態と思われる1898年以前に比べて約5-7倍の堆積速度を示した。一方、火山灰は栄養塩を含んでいるため、湖への火山灰堆積は植物プランクトンを増加させる。しかし、1694〜1739年の安定同位体の値は駒ケ岳-c2の堆積があるにもかかわらずプランクトンの増加を示さなかった。これは湖が貧栄養状態にあったためと思われる。次に1739〜1898年と1898〜1963年は、それぞれ樽前-aの火山灰堆積と1898年以降流域開発による栄養塩の流入がプランクトンを増加させ、中栄養状態を示した。また、農地や牧草地が広く開発された1963年以降は栄養塩の流入が多くなり、富栄養状態を示した。

マリモの遺骸量は堆積年代を問わず湖北部から採集された堆積物で多かった。一方、マリモ遺骸の変遷については、土砂堆積量が少なく、中栄養状態の 1739〜1898年は急増したが、流域開発が進んで土砂堆積量の増加と富栄養化した1898年以降、マリモ遺骸量は急減した。

日本生態学会