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一般講演 P1-071

絶滅危惧植物個体群への農村環境の変化の影響評価―キキョウを対象として―

*吉田聡子(横浜国立大),日鷹一雅(愛媛大),渡邉修(信州大),松田裕之(横浜国立大)

近年、里山里地では管理減少による生物多様性の減少が危惧されている。これは、社会変化とともに利便性追求による農作業変化、農村の過疎高齢化、農業従事者不足と密接に関わっていることが言われている。保全対策を考える上で、農村社会変化と生物への影響を定量的に評価することが求められる。

本研究では生物と農業・農村環境変化との関連性を明らかにするために、在来のキキョウを対象に広島県北部で、野外調査を行った。キキョウは、全国的に広く分布し、日当たりのよい野生草地に多く生息していたが、近年、園芸用の採集、草地植生の遷移、開発等により減少し、絶滅危惧2類に指定されている。本調査では、対象地域からキキョウが生息している可能性が高い林縁部、ため池堤を抽出し、合計45集落73地点のキキョウの生息有無を確認した。また、農業集落属性データと集落地図データを、それぞれ農林水産省による農林業センサス農家・農業集落調査をまとめた2000年農業集落カード、2000年農業集落地図データから抽出した。これらをGISによりキキョウ調査地点と照合し、関連性を解析した。

野外調査の結果、キキョウ確認集落は14集落、未確認集落は31集落であった。減少要因の一つと考えられる平均耕地面積減少率(’70年から’00年)は、確認集落では30.5%(標準偏差17.1)、未確認集落では39.2%(標準偏差19.7)となり、確認集落の方が低い値となった。Mann-WhitneyのU検定では有意差はなかったが、農業・農村変化による影響だけではなく、潜在的なキキョウの生態条件等の要因も関連するため、今後、他の要因を検討し、詳細な調査・解析を行う必要がある。

日本生態学会