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一般講演 P1-075

絶滅危惧植物シラタマホシクサの発芽特性ー個体群変異ー

*増田理子(名工大・都市社会),水野秀俊(名工大・社発),岩井貴彦(名工大・社工)

絶滅危惧植物であるシラタマホシクサは開発による生育地の破壊のため、激減している。ある報告ではこの50年の間に個体群が半数にまで減少してしまったという報告もある。自然保護団体はすでに絶滅してしまった群落復活のため、生存している集団から種子を採取し、播種する方法で群落再生を試みている。しかし、これまでシラタマホシクサの発芽特性についてはほとんど調べられた例が無く、集団間における違いについてもほとんど認識されていなかった。

そこで、本研究では三河地方の水源が違い、平均気温も異なる11集団から種子を採取し、3つの温度条件下で発芽実験を行った。実験した集団は行人町湿地、板山長根湿地、<天白川水系>新池湿地など2カ所、<庄内川水系>東国山2カ所、<矢作川水系>矢並湿地など2カ所、<渥美半島周辺>天伯湿地、<静岡県>浜北市二カ所である。発芽温度条件は5-15℃(12h/12h), 10-20℃(12h/12h), 15-25(12h/12h), の変温、0.2μmol光条件下で行った。カウントは24時間おきとし、カウントは蛍光灯の光の下で行った。発芽実験前には種子を4℃湿潤条件下に約1ヶ月保存し、十分休眠を解除して実験を行った。そののち発芽速度、積算温度を求めた。

その結果、発芽速度、積算温度には明らかな差が認められた。平均気温が比較的低い生育地では低温条件での発芽速度がほかの集団よりも大きかった。また、比較的暖かい知多半島の集団では発芽速度が小さい傾向が認められた。積算温度に関してはほとんど差が認められなかったが、積算温度の基盤となる温度に差が見られた。

シラタマホシクサは各生育地において、その地域に適応した発芽特性を持っていると考えられる。このため、異なった生育地から蒔きだしをして個体群の復元をする場合には注意が必要であると考えられる。

日本生態学会