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一般講演 P1-081

日光白根山のシラネアオイ保全に対するアプローチ

*上野晴子(栃林セ),生井潔(栃農試),天谷正行(栃農試)

シラネアオイ(Glaucidium palmatum)は、北海道から本州中部地方に自生する高山植物で、1科1属1種の貴重な日本固有種である。和名の由来となった栃木県日光市の白根山では、大群落が知られていたが、シカの食害により局地的減少が見られる。このため栃木県では、平成5年から群落地を電気柵で囲い保護に努めている。また近年、野生植物の乱獲や、他の地域から株が持ち込まれて植栽されるなど、シラネアオイの生態への影響も懸念される。そこで本研究では、減少する個体の保存を目的とし、葉片培養による増殖技術の開発に取り組み、さらに、現在の日光地域における本種の遺伝的多様性を把握するため、DNAマーカーによる調査を行った。

約5mm四方の葉片をBAPおよびNAAを添加したMS培地に置床し、不定胚の形成を試みた。不定胚の形成率はNAA5μM単独添加区が最も高かった。不定胚の増殖はBAP5μM、NAA1μMを添加したMS培地で行った。発芽した不定胚は、IBA0.1μMを添加したB5培地に移植した結果、発根が促進され、植物体として再生した。現在、再生植物体の順化試験を実施しており、最終的には、白根山地域での定着を目指している。

白根山群落および栃木県内の他の自生地(5箇所)、さらに群馬県(2箇所)、福島県(1箇所)の自生地から葉のサンプリングを行った。DNAを抽出後、2つの採取地から任意に1個体ずつ選択し、約100種類のプライマー(10mer)を用いてスクリーニングを行った。この結果、2個体間で鮮明な多型を示したプライマー18種類を選抜した。選抜プライマーを用いてRAPD分析を行い、再現性を確認後、得られたマーカーをもとに平均距離を算出し、群平均法によるクラスター分析を行った。

日本生態学会