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一般講演 P1-120

長野県上伊那地方の水田地域におけるバッタ類群集の構造と立地環境との関係

大窪久美子(信大・農),伊藤蕗子(信大・農),水野敦(信大院・農),四方圭一郎(飯田美博),中村寛志(信大・農),小林正明(飯田女短)

水田畦畔における草食性昆虫の代表であるバッタ類(直翅目)群集の現状を明らかにし,土地利用条件および管理との関係を解明することを目的とした.調査は上伊那地方の市街化未整備地域Aと同整備済地域Bの2地域で,2006年9月初旬から10月中旬に計4回実施した.各地域で直径500m円内に植生の違い等を考慮した上で10畦畔を選び,1畦畔に1m方形区を各3プロット,計60プロットを設置した.バッタ類群集調査は目視の確認とともに,捕虫網で1回5往復のスウィーピングを行い,捕獲個体は全て処理後に標本とし専門家に同定していただいた.植生は優占種名,群落高,植被率を記録した.土地利用調査は1/2500都市計画図で直径500m円内を現地踏査により行い,利用区分毎プラニメーターを用いて計測した.その結果,未整備のA地域ではオンブバッタ,コバネイナゴ,ヒメクサキリ,コバネササキリ,エンマコオロギの4科5属5種が,整備済のB地域では4科4属で,コバネササキリ以外の4種が出現し,これらは地域における普通種であった.その他,目視のみで2−3種を確認した.全調査期間を通じての全種の総出現個体数はA地域では161個体,B地域では11個体で,未整備地域は整備済地域より著しく多かった.群落高の平均値はA地域よりB地域の方が低かった.B地域では畦の草刈等が頻繁に行われるため,群落高が低く保たれており,植生管理の違いがバッタ類の種数や個体に影響したと考えられた.土地利用調査の結果,A地域では住宅地,水田,畑,B地域では住宅地,水田,道路の順に,面積割合が大きかった.整備済のB地域は未整備のA地域よりもバッタ類の好適な生息環境の面積割合が低く,これが種数や個体数に影響したと考えられた.

日本生態学会