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一般講演 P1-123

宮川流域におけるアジメドジョウの支流間スケールでの分布を決める要因

*加藤雅之,原田泰志(三重大・生物資源)

中部,北陸,近畿地方の河川中,上流域にのみ分布するアジメドジョウ(Niwaella delicate)は近年,各地で人為的な河川開発に伴う河川環境の変化により各地で著しく減少しており,三重県においても絶滅危惧1B類に位置づけられている.本種の存続のためには分布状況や生息に適した環境条件等の情報が必要である.本研究では,比較的多くの個体が生息している三重県南部の宮川流域において,分布状況と本種が本来必要とする環境条件を明らかにすることを目的とした.

調査は三重県宮川流域において,宮川に直接流入する8河川(以下河川)とその17支流(以下支流)で行った.各河川及び支流において電気ショッカーを用いて生息状況を確認した後,生息環境として地図情報より流程距離,集水面積,河川全体の平均勾配,河川下流域の平均勾配を測定し,また調査時に河川内の砂量および河川下流部の形状について記録し,生息を決定している要因について検討した.

分布調査において5河川とその8支流で生息を確認した.生息河川と非生息河川との間で環境要因を比較したところ生息河川のほうが流程距離,集水面積が大きく,河川全体の平均勾配,河川下流域の平均勾配が緩やかであった.次に支流間で環境を比較したところ,流程が長く,集水面積が大きく,河川全域,河川下流部ともに勾配が緩かった.そこで,各支流の生息−非生息を目的変数とし,各環境要因を説明要因に用いたロジスティック回帰分析を行い,変数減少法による変数選択を行ったところ,「河川下流部の勾配」のみが最適なモデルとして選択された.

今回の調査の結果,本種が生息していた支流は,河川規模が大きく河川勾配が緩いところであった.これは本種が流速の早い環境に適さない事を示唆しており,下流部の勾配がきつい河川は本流からの加入を制限されている可能性が考えられる.

日本生態学会