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一般講演 P1-125

千葉県沿岸におけるアマモZostera marinaメタ個体群の長期変動

*渡辺健太郎,仲岡雅裕(千葉大学・自然科学),石井光廣(千葉県水産総合研究センター),近藤昭彦(千葉大・環境リモセン)

沿岸生態系の主要景観のひとつであるアマモ場は開放系であり、複数のアマモ場が物質や生物の交流で結ばれたメタ群集を形成していることが考えられる。そのような生態系の変動予測や機能評価には、個別の場所のみに着目するのではなく、より大きな空間スケールでの特性を考慮することが必要である。

本研究は、東京湾内千葉県沿岸のアマモメタ個体群を対象とし、その時空間変動を明らかにすることを目的とした。まず千葉県富津市富津岬南側から館山市洲崎にかけて、陸から目視調査をおこない、2006年におけるアマモ場の分布を確認した。次に、目視調査で確認されたアマモ場のうち比較的大きなアマモ場を数ヶ所選び、1989年から2005年までの局所個体群の面積変動について、航空写真を用いGISによって解析した。

目視調査の結果、29ヶ所でアマモの生育が確認された。この結果を2003年の調査と比較すると、8ヵ所で局所個体群の絶滅が確認され、また6ヵ所で新しい局所個体群の出現が確認された。このことから東京湾内のアマモ局所個体群は、ある程度頻繁に出現と消滅をしていることが示唆された。

航空写真よりアマモ場面積の長期変動を解析した結果、多くのアマモ場では変動傾向は不明瞭であったものの、一部のアマモ場では数年間で面積が3倍以上に拡大し、アマモ場の増減は非同期的であることが示された。著しい増加が見られたところは、港湾建設など周辺環境の変化が生じた場所であった。このことからアマモ場の空間動態の把握および予測には、アマモ場内部の環境要因だけでなく、アマモ場周辺の広域環境の影響を調べることが必要であることが示された。

日本生態学会