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一般講演 P1-132

サロベツ湿原における草原性鳥類の生息地評価

*鈴木透(EnVision),高田雅之(北海道環境研),玉田克己(北海道環境研)

サロベツ湿原は北海道北部に位置する高層湿原であり希少な動植物が数多く生息する。しかし、農地化などによる乾燥化に伴う水位の低下や植生の変化(ササ等の増加)が問題になっている。この乾燥化に伴う植生の変化は生息する野生動植物への影響も大きいと考えられる。そこで本研究では、7種の草原性鳥類を対象として、サロベツ湿原内における生息環境を分析した。さらに生息環境の分析結果から、湿原の乾燥化に対するリスク評価を行った。

鳥類調査は、設定した41地点の調査地点において、ヒバリ、ツメナガセキレイ、ウグイス、シマセンニュウ、コヨシキリ、シマアオジ、オオジュリンについて、目視およびさえずりにより生息状況を確認した。また、現在の植生は、LandsatETM+画像(2000年6月24日撮影)とグランドトゥルースとして84箇所における植生調査のデータを用いて、画像分類を行うことにより推定した。植生は、湿原における主要な4種類の植生(ミズゴケ植生、スゲ植生、ササ植生、ヨシ植生)と、それらが混合した3種類の植生(スゲ−ミズゴケ植生、ササ−スゲ植生、ササ−ミズゴケ植生)に分類した。分類にはマハラノビスの距離を用いた判別分析を用いた。

画像分類の結果、85.6%の正答率が得られ今回の結果は概ね現存植生を反映していると考えられた。また、生息環境分析の結果、7種の内ツメナガセキレイとオオジュリンを除く5種について有意な結果が得られ、特にヒバリとシマアオジについてはササを含む植生を避ける傾向が見られた。これらの種は、湿原の乾燥化に伴うササの増加により今後個体数の減少が懸念される。

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