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一般講演 P1-204

天然CO2噴出地におけるオオイタドリ群落の炭素、窒素動態

*長田典之(東北大・院・生命科学), 小野田雄介(ユトレヒト大), 彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

近年大気CO2濃度は急激に上昇している。大気CO2濃度の増加に対する植物の応答の研究は将来の植生の変化を予測する上で重要である。天然CO2噴出地は実際に長期間にわたり高CO2濃度にさらされてきたと考えられるため、植物の長期間の高CO2応答を調べることのできる貴重なサイトである。演者らは八甲田山系田代平の天然CO2噴出地およびその周辺に優占するオオイタドリを対象として個葉の光合成特性の研究をおこなってきた。この結果、これまでにポット実験などにより得られた結果と同様に、天然CO2噴出地に生育する植物でも高CO2では個葉の窒素濃度が減少し、光合成窒素利用効率(窒素あたりの光合成能力)を上げていることが確認された。このことから、大気CO2濃度の上昇は植物の相対的な炭素・窒素要求量を変化させ、ひいては植物群落および生態系レベルの炭素、窒素動態にも影響を与えると考えられる。当研究では天然CO2噴出地において、長期間の高CO2がオオイタドリ群落の個葉レベルおよびシュートレベルでの炭素、窒素動態に与える影響を調べた。

個葉レベルでは、大気CO2濃度が高いほど枯れ葉の窒素濃度は低くなり、窒素回収効率(1ー【枯れ葉の窒素濃度】/【生葉の窒素濃度】)が増加する傾向が見られた。一方、シュートレベルの窒素利用効率(1年あたりの放出窒素量に対する成長量)には大気CO2濃度に応じた差は見られなかった。さらにシュートの窒素利用効率を窒素生産力(窒素あたりの年間成長量)と平均窒素滞留時間に分解したところ、どちらもCO2濃度の影響は見られなかった。

以上の結果に基づき、高CO2濃度がオオイタドリ群落における炭素および窒素動態に及ぼす影響を議論する。

日本生態学会