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一般講演 P1-228

根・茎・葉の割合は何によって決まっているか? −実生の場合で考える−

種子田春彦(東大院・理),大曽根陽子(森林総研),石田厚(森林総研)

植物の形作りは,与えられた条件の中で,最も効率的な成長や生存を可能にするものでなければならない.成長を左右する要因は,環境要因のほかに根による水分吸収や茎による水輸送といった植物体の器官が担う機能に大きく依存する.器官が担う機能は,各器官の性能とその器官への物質量と強く関係する.では,根,茎,葉という植物の基本的な器官への物質分配はどの要因が決めているのだろうか.

この問いに対して実験的に答えることは難しい.なぜならば,根は水分吸収と窒素吸収,茎は水輸送と力学的支持といった複数の機能をひとつの器官が担っているからである.そこで,本研究では,複数の数理モデルの予測を比較することで植物個体,特に実生の物質分配を制限する要因を推測した.窒素吸収に関する最適な数理モデルはOsone & Tateno (2003), 力学的支持に関するモデルはTateno & Bae (1990), 水輸送に関する数理モデルはTaneda & Tateno (2004)を参考にした.イタドリとケヤキにおける根,茎,葉の物質分配のデータを測定し,各器官の機能に関わるパラメータと温帯域の環境条件とから得られた各モデルからの予測値を比較した.その結果,地上部と地下部における物質分配は窒素の吸収にあわせ,地上部の中の葉と茎における物質分配は力学的な安定性を維持できるようにすることが重要であり,水の吸収や輸送に関しては過剰に作られていることが示唆された.

Tateno & Bae (1990) Plant Physiol. 92, p.12

Osone & Tateno (2003) Funct Ecol. 17, p.627

Taneda & Tateno (2004) Amer. J. Bot. 91, p1949

日本生態学会