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一般講演 P1-236

熱帯樹木の対水ストレス戦略に関する生理生態学的研究

*近藤祥子, 酒井章子(京都大・生態研),中静透(東北大・生命科学研)

植物は気孔を通じて炭酸同化・呼吸・蒸散作用などのガス代謝を行ない、酸素・二酸化炭素や水蒸気を大気との間で交換し、環境変動に対応して葉の気孔開閉による水分収支の調節を行なっている。気孔開閉に及ぼす外的要因として、光・CO2・O2濃度・温度・水分条件・化学物質等の観点から多くの研究が行われてきた。世界で最も生産力の高い森林生態系である熱帯雨林は、林冠が高く階層構造が発達している。この構造に伴い林内の微環境は不均一で、熱帯雨林の林冠上部では日中、気温の上昇、湿度の低下、大気のCO2濃度の低下などが林床に比べて大きい。このような環境条件の変動は光合成に影響を及ぼし、高い林冠部の葉は吸水の遅れによる水分ストレスを受けやすい状態にあるといえる。

本研究では、熱帯雨林の高い林冠層を構成する樹種の適応戦略を理解するために「日中大きく変動する環境に林冠構成葉はどう反応しているのか」を熱帯構成樹種の光と水分条件の変化に対する生理的特性反応の種間差から明らかにした。

調査地はマレーシアサラワク州ランビルで、林冠構成樹種9種(フタバガキ科ショレア属5種とそれ以外4種)について、葉温・気孔抵抗・蒸散速度と葉の水ポテンシャルを測定した。気孔開閉は主に日射量、湿度、水分状態に応答することがわかっており、本研究ではJarvis 型の式を用いて、日射量(PPFD)、飽差(VPD)、葉の水分ポテンシャル(Ψleaf)の環境応答による気孔コンダクタンス(Gs)の変化を種間で比較する事が出来た。

これらの結果より、熱帯雨林でも水ストレスを経験している種があるか?林冠樹種の水利用に関する戦略の差は何か?環境に応答した気孔開閉主要因に種間差はあるか?より樹高が大きい種ほどより水ストレスが大きいか?について考察した。

日本生態学会