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一般講演 P1-243

「鳥取砂丘の植物の生理生態  1.水利用:酸素炭素安定同位体比を用いて」

*小山晋平(京大・農),松尾奈緒子(三重大・生物資源),大手信人(東大・農) ,小山里奈(京大・情報), 山中典和(鳥取大・乾地研),尾坂兼一(京大・農),嶋村鉄也(京大・AA研),徳地直子(京大・フィールド研)

近年、鳥取砂丘では植物の侵入・草原化の進行が問題となっている。砂丘では土壌中の水分条件の変動が大きいことから、水分利用に関する生理特性は、植物の侵入機構において検討すべき要素である。本研究では蒸散特性と水利用効率を酸素・炭素安定同位体比を用いて外来種と在来種とで比較した。この手法により、ガス交換チェンバーを用いた方法では把握しにくい、長期間平均された植物の蒸散強度と水利用効率の推定が可能になる。また、砂丘上での植物の水利用様式を明らかにするため、土壌中と茎中の水の安定同位体比を照合して吸水源を推定する手法を用いた。根系分布から推定する従来の方法とは違い、実際に利用している水の同定が可能である。調査対象は、ニセアカシア(外来種)、アキグミ(防砂林としての導入種)、ハマゴウ(在来種)である。それぞれの気孔コンダクタンスをガス交換チェンバー(LI-COR,LI1600)で測定後、葉のサンプルを採取した。また土壌は表層から10cmごとに40cmまで採取し、茎も併せて採取した。各サンプルから真空蒸留法で抽出した水の酸素安定同位体比、さらに葉の有機物中の酸素・炭素安定同位体比を測定した。その結果、各樹種における葉の水の同位体濃縮(ΔLW)は、温度、湿度、気孔コンダクタンスの大小とそれぞれ相関関係が見られ、またΔや気孔コンダクタンスの値には樹種間差が見られた。アキグミは最もΔ値が大きく、気孔コンダクタンスが最も小さかったことから、蒸散量を抑えながら調査種の中で最も効率的に光合成をしていることが明らかになった。

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