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一般講演 P1-249

日本産土壌でのクズの生育

*森田沙綾香,平舘俊太郎,楠本良延,山本勝利,藤井義晴((独)農業環境技術研究所)

著者らは植生と土壌の化学的特性の関係を解明することを目的として研究を行っている。昨年度は茨城県南部の草地を中心に植生調査を行い、そこに分布している植物群落を5タイプに分類するとともに調査地点の土壌分析を行った。その結果、植物群落タイプ間で土壌pH、置換酸度(y1)、有効態リン酸(Bray II)、土壌炭素含量に大きな差が認められ、植物群落タイプと土壌の化学的特性は密接に関連していることが示された。本研究では、日本だけでなく他国でも蔓延しているクズについて室内栽培実験を実施し、土壌の化学的特性がクズの生育に及ぼす影響について調べた。日本の代表的な土壌6点(アロフェン質黒ぼく土、非アロフェン質黒ぼく土、灰色沖積土壌、赤黄色土、赤褐色石灰質土、対照(クレハ園芸用倍土))を用いて、茨城県つくば市にて採取したクズを2〜5週間生育させ、発芽率及び生育量を調査した。播種14日後は各土壌間でのクズの発芽率及び生育量に差はなく、初期生育における交換性アルミニウムによる生育阻害の影響は小さいと考えられた。赤黄色土におけるクズの生育は、20日後にはほぼ停止し、28日後には枯死した。この赤黄色土には多量のMnが含まれていることから、Mn過剰症が原因であると考えられた。28日後には葉齢に差がみられ、対照>灰色沖積土壌>アロフェン質黒ぼく土>赤褐色石灰質土>非アロフェン質黒ぼく土、となった。また乾燥重量は、対照>>灰色沖積土壌>アロフェン質黒ぼく土>赤褐色石灰質土>非アロフェン質黒ぼく土、となった。葉齢の遅延はP欠乏が、生育量の低減はN欠乏が主な原因と考えられ、クズの生育は各土壌における植物栄養元素および植物生育阻害元素の生物有効性の影響を受けていると考えられた。以上のように、土壌の化学的特性がクズの生育に影響を与えている一因であることが明らかとなった。

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