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一般講演 P1-250

異なる光条件下で生育するアラカシとヒサカキの水分通導機能および気孔応答調節

小笠真由美,三木直子,石井義朗,坂本圭児,吉川 賢

キャビテーションに対する感受性は水分通導性における可塑性の程度を表し、異なる光条件下で生育した樹木は木部の通水機能的にも光環境に順応する。このため生育環境に伴うキャビテーションに対する感受性の違いは植物が生育地に順化する際に考慮すべきパラメータといえる。そこで本研究では、樹木が異なる光環境にどのように順応しているのかを水分通導特性および気孔の開閉調節の面から明らかにすることを目的とした。

測定には異なる光条件である相対照度100%区、10%区および3%区の3処理区で約2年間育てたアラカシとヒサカキの苗木を用いた。vulnerability curveより、両樹種ともに暗い処理区ほど木部の水ポテンシャルの低下に伴う水分通導度の低下の程度が高い傾向が認められた。このキャビテーションに対する感受性の違いを木部構造(道管直径)より検討した。その結果、道管直径のサイズには差が認められなかったが、100%区と10%区では小径の道管を使用し、キャビテーションに伴うリスクを低く抑える傾向が見られた。3%区ではより大径の道管を使用していた。気孔コンダクタンス(gs)および蒸散速度においては、アラカシの100%区では日中にgsを低下させており、日蒸散量も10%区と同程度に低かった。一方ヒサカキの100%区ではgsが終日低い値を示し、日蒸散量は10%区と同程度に低い値を示した。また、100%区で総葉面積がその他の処理区よりも有意に小さい傾向があった。以上より、アラカシは光条件に応じて使用する道管のサイズを変え通水機能を維持するとともに、気孔の開閉調節により失水の制御を行うことが示唆された。ヒサカキはこれに加え、光条件に応じた個体レベルでの葉量の調節を行うことが示唆された。

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