| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-008

チベット高山草原の標高傾度に伴うセルロース分解と微小菌類相の関係

白水貴(筑波大院・生命環境),廣田充 (筑波大・菅平高原実験センター),大塚俊之(茨城大・理),千賀有希子(立正大・地球環境),杜明遠(農環研),下野綾子(国立環境研),唐艶鴻(国立環境研)

セルロースは陸上生態系において最も存在量が多い高分子であり、その分解に関する生態学的研究は陸上生態系の炭素循環を解明する上で非常に重要である。菌類はセルロースの主たる分解者であるにも関わらず、野外環境におけるセルロース分解に関与する菌類群集の記載や菌種ごとの分解能力の評価に関する研究例は少ない。本研究では地球温暖化に対する指標生態系として注目されるチベット高山草原を調査サイトとし、標高傾度に伴うセルロース分解パターンと微小菌類群集の関連性を明らかにすることを最終的な目標と掲げ、その評価方法に関する検討を行った。セルロース分解は標高4500mから5300mにコットン布を土壌深0-15cmに埋め、設置1年後に回収し重量減少率を測定することにより評価した。その結果、標高5200m以上では分解活性が有意に低く、最大分解活性は標高4950mでみられることが明らかになった。これらのうち標高4950mで採取したコットン布を用い菌類調査法の検討を行った。すなわち、布からの菌類分離法、分離された菌類の温度適性と分解能力の評価方法の検討を行った。その結果、それらの方法を確立することができたので、標高4500, 4950, 5200mの布を用い、土壌深度0, 5, 10, 15cmごとに微小菌類群集の評価を行った。標高間では高頻度種に相違がみられたが、同一標高での土壌深度間では明確な違いは見られなかった。また標高5200mは低温耐性のセルロース分解菌相で他の標高との相違がみられた。この相違は、標高5200mにおける土壌含水量の低さによりもたらされたと考えられるが、今後さらなる検討が必要である。

日本生態学会