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一般講演 P2-017

冷温帯落葉広葉樹林におけるN2Oフラックスの季節変動

*八代裕一郎(岐阜大), 稲富素子(地球フロンティア), 安立美奈子(農環研), , 米村正一郎 (農環研), 小泉博(岐阜大)

温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)は、その温室効果能がCO2の約296倍に及び、過去150年間の気候強制力への寄与は約6%を占める。その温室効果への影響力から全球のN2O収支の正確な推定が求められている。

N2Oは土壌が主要な放出源であり、その放出を促進する諸要因として、土壌水分、地温、pH、無機態窒素量などが挙げられる。これら諸要因が複雑に絡み合い、同一生態系内においてもN2O放出量は時空間的に大きく変化する。従って、各生態系において、N2O放出量とそれを制御する要因を時空間的に明らかにする必要がある。

そこで、本研究では岐阜県乗鞍岳に位置する冷温帯落葉広葉樹林においてN2O放出速度および土壌の諸要因(地温・水分・pH・全窒素・全炭素・無機態窒素)の測定を行った。測定は2006の展葉後の6月と7月および落葉前の10月に行った。

平均N2O放出速度は、6月に0.85、7月に1.30、10月に0.49 μgNm-2h-1となり、明瞭な季節変化を示した。この季節変化は地温の変動と対応が見られたため、地温が律速要因であると考えられる。さらに、N2O放出速度の空間的な変動について見ると、7月と10月に土壌水分と正の相関が見られた(7月;R2 = 0.74、10月;R2=0.26)。7月および10月のN2O放出速度の空間変動は土壌水分により制御されると推察できる。一方、6月には土壌水分と明瞭な関係が見られなかった。また、6月にはN2O放出速度が他の何十倍にも達する測定点「ホットスポット」が確認された。N2O放出量を見積もる際、この「ホットスポット」を検出することが重要であることが示唆される。

日本生態学会