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一般講演 P2-024

食物網は空間的にどこで分かれるのか? プランクトン食物網による検証

土居秀幸 (Univerisity of Washington),Zuykova, E. I.(Siberian Branch of Russian Academy Sciences),菊地永祐(東北大・東北アジア研),鹿野秀一(東北大・東北アジア研),Yurlova, N. I.(Siberian Branch of Russian Academy Sciences),Yadrenkina, E. N.(Siberian Branch of Russian Academy Sciences)

食物網研究は,ある場所での食物網構造に着目するものが多く,食物網が空間的にどのように配置されているかについて言及した研究は極めて少ない。湖沼においては,食物網は沿岸帯,沖帯,底生食物網などに大きく区分できると考えられてきた。しかし,その範囲は数〜数十kmに及び,その中で食物網が分かれている可能性が考えられる。そこで我々は,沖帯の食物網がどのように空間的に分かれているかを,ロシア・西シベリアのチャニー湖においてプランクトン食物網を用いて検討した。チャニー湖の河川流入部から10地点を調査地点として選定し,植食者,捕食者の動物プランクトンと植物プランクトンを採集し,炭素・窒素安定同位体比を測定した。その結果,7地点で炭素安定同位体比が連続的に大きく異なり,これは各水塊でプランクトン食物網が分かれていることを示していると考えられた。また炭素安定同位体比が異なった要因としては,外来性有機物の流入量変化と,湖水pHの変化から溶存態二酸化炭素ガスの減少によって,植物プランクトンが利用する無機炭素が変化したためであると考えられた。よって,沖帯食物網において数百メートルスケールで,プランクトン食物網が分離していることが明らかとなった。

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