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一般講演 P2-026

霧の影響下にある熱帯季節林における物質流入量の評価

*小田智基(東京大),田中延亮(JST),鈴木雅一(東京大)

海岸部や標高の高い森林では、霧や雲によってもたらされる水分が森林の水循環、物質循環に大きな影響を与えている(例えばWeathers et al,2000)。タイ北部チェンマイの標高1300mに位置するKog-Ma試験地では、水循環研究の一環として霧ゲージを用いた霧水の量水観測が行われ、降水量の約10%に相当する水分が霧水によって生態系に供給されていることが示されてきた(Tanaka et al,2005)。本研究では、Kog-Ma試験地において林内雨、林外雨、霧水について量、物質濃度を計測することにより、物質流入量を定量的に算出し、霧の影響を評価することを目的とした。7月31日から10月10日まで週1回の頻度で50 mのタワー上に設置された霧ゲージに捕捉された霧水、また、12地点の林内雨、林外雨も同頻度で採取し、Cl-、NO3-、SO42-、Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+の濃度を分析した。

7月31日から10月27日までの林外雨量1070 mm、林内雨量は750 mmに対して霧ゲージを用いて推定された霧水による水分供給量は72-106 mmであった。霧水は分析した全てのイオンで林内雨よりも高い濃度であり、Cl-、NO3- Na+の濃度は林内雨の10倍以上であった。また、霧によるCl-、NO3- 、SO42- 、Na+ 、NH4+の同期間の流入負荷量は林内雨による流入負荷量の60 %以上を占めているという結果が得られた。このことから、霧の影響下にあるタイの熱帯季節林コグマ試験地では湿性降下物によりもたらされる物質の内、霧による物質の供給が主要であることが分かった。

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