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一般講演 P2-043

東アジア陸域生態系における炭素固定能力-渦相関法によるフラックス観測結果のレビュー-

*加藤知道(JAMSTEC/地球フロンティア)

地球温暖化などの気候変化のメカニズムを理解するためには、主要な温室効果ガスであるCO2をはじめとするグローバルな炭素循環を、定量的に把握する必要がある。一方で、その地球の炭素循環の把握において、陸域生態系の挙動は、最大の不確定要素であるとされている。そのため、最近10年間ほどで、微気象学的方法である渦相関法を利用した世界的観測網が急速に整備されてきており、大気-陸域生態系間のCO2交換量を正確に調べる努力がなされている。しかしながら、東アジアにおいては、その観測サイトの設置が大きく遅れている上に、専門家の不足や、データ公開への意識の低さから、各サイトの観測結果を集積して統合的に解析し、東アジアの炭素吸収量を把握する試みが未だなされていない。このように、統合解析が遅れをとっていることは、東アジアにおける炭素管理政策の推進において、大きな妨げになっている。そこで本研究は、東アジア生態系の炭素吸収力評価研究のさきがけとなるべく、すでに論文や学会発表要旨として出版された炭素循環研究の成果を集め、初歩的な統合解析を行った。

本研究では、ツンドラから熱帯林まで、北緯70度-南緯2度、東経83-161度の間にある約50ヶ所の渦相関法タワーによるCO2フラックス観測研究から発表された年間炭素収支と環境要因との関係を調べた。その結果、平均の年間NEEは温帯・熱帯で-300g C m-2 yr-1前後と小さく、北方・高山帯で-150 g C m-2 yr-1と大きかった。また、植生タイプによる分類では、年間NEEは特に温暖な地域で差が見られなかった。次に、各サイトの年間NEEは、全体として年平均気温や年間降水量と強い負の相関関係があった。

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