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一般講演 P2-046

青海・チベット高山草原におけるCO2フラックスの空間変動特性

*廣田充(筑波大・生命環境),張鵬程(筑波大・生命環境),古松(中科院・西北高原研究所),唐艶鴻(国立環境研究所・生物)

青海・チベット高原は、広大な面積を有し、そのほとんどが高山草原である。高山草原には大量の土壌有機炭素が貯留されており、地球規模の炭素動態にも影響を及ぼす生態系として注目されている。日本でも2001年から環境省の推進費による当該生態系におけるCO2フラックス観測が行われており、現在も継続観測されている。これらの長期観測によってCO2フラックスの時間的変動は、短時間および長時間スケールで明らかにされてきたがその一方で空間変動特性については明らかにされていない。それは広範囲の生態系を対象とする微気象学的手法では、その中の空間的変動まで把握できないからである。当該生態系の特徴として種の多様性が著しく高いことや、複雑な微地形が多数存在することなどを考慮すると、CO2フラックスの空間変動も高い可能性があり、その特性を明らかにする必要がある。そこで、発表者らは高山草原におけるCO2フラックスの空間変動特性を解明することを目的として、多点同時観測が可能なチャンバーシステムを開発し、観測を行っている。本調査は2005年7月に青海・チベット高原の北東部に位置する高山草原において、任意に選んだ14地点を対象として大気-生態系間のCO2フラックスを測定した。各地点では透明チャンバーでNEP測定後に暗条件下で日中の生態系呼吸(Re)を測定した。フラックス観測終了後に、各チャンバー内の種組成や種毎のバイオマス等を測定した。測定期間中のNEPとReの空間変動は大きく(-6.5±2.2および10.8±4.1 μmol m-2 s-1)、いずれのフラックスも地上部および地下部バイオマスとの正の指数関数的な相関が見られたが、種組成もフラックスの空間変動に関与している可能性が示唆された。

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