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一般講演 P2-056

照葉樹環境保全林における二酸化炭素固定量推定に関する研究

*宮内 大策, 藤原 一繪(横国大・院・環境情報)

二酸化炭素濃度増加による地球温暖化が懸念され、森林のバイオマス管理による大気中の二酸化炭素濃度の制御への貢献が期待されている。また都市域においても緑地機能の一つに考える必要がある一方で、都市緑化による二酸化炭素固定効果がどの程度期待できるかは、まだ明確になっていないのが実情であり、基礎的なデータの蓄積が望まれている。

1970年代より生態学的な手法に基づいて人工的に自然林を造成しようとする環境保全林形成の試みが行なわれてきた(宮脇ら 1993)。これは特に工場周辺や道路のり面など造成工事によって新たに生じた裸地に、その立地に本来生育する高木になる樹木の幼苗を密植混植し、立木密度の高い樹林を作り出そうというものである(長尾ほか 2003)。環境保全林に対して定量的に二酸化炭素固定量など物質生産に関する研究が直接的に行われた例は少ない。

調査は埋立地に造成され植栽後約30年を経た環境保全林として新日本製鐵株式会社の大分製鐵所、名古屋製鐵所、そして神奈川横浜市北部第二水再生センターで行なった。また造成初期の例として兵庫県神戸市にあるエスペック株式会社神戸R&Dセンターでも同様の調査を行った。

調査地全体で60個体を伐倒、幹の直径や樹高を測定したのち、幹重・枝重・葉重を秤量した。その後、調査地ごとにDBHや樹高と幹重・枝重・葉重との相対生長関係を作成した。同時に毎木調査を行い、伐倒調査で作成した相対生長関係を適用して地上部現存量を推定した。大分327.3t/ha、横浜260.9t/ha、名古屋191.4t/haと環境保全林は、植栽後30年を経過した森としては大きな現存量を有していることが明らかになった。さらに異なる地域間で用いる共通式の作成や、樹種ごとの共通式の作成、生長様式について検討した。

日本生態学会