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一般講演 P2-057

MODIS画像を使った生態系純生産量のスケーリングアップ手法の開発

*酒井徹,粟屋善雄(森林総研),遠藤貴宏,プラナブ・バルア,安岡善文(東京大学)

地球温暖化問題と関連して、森林の炭素固定量を評価することは近年益々重要になってきている。しかし、森林の炭素固定能力は、その複雑な構造と気象条件によって大きく変動する。そのため、森林の炭素固定量を定量的に評価するのに広域観測が欠かせない。本研究では、広域観測衛星(MODIS)から得られるパラメータを使ったモデルを利用して生態系生産量(NEP)の広域マップを作成し、同一生態系内であっても森林の炭素固定量がいかに異なるかを定量的に評価することを目的とする。まず初めに、2つのサイト(高山と羊ヶ丘)のフラックスタワー観測データを用いて、モデルのパラメータ化とその検証を行った。日本の落葉広葉樹林のNEPは、MODISデータによる熱バンドと植生指数からなる簡便なモデルを使うことによって推定することが可能であった。高山と羊ヶ丘のNEPのフラックス観測値は、それぞれ348、346 gC m-2 year -1となり、比較的近い値を示した。しかし、これら2つのサイトは、日本の落葉広葉樹林を代表している訳ではない。MODISデータから推測された日本全体の落葉広葉樹林のNEPは、347 ± 288 gC m-2 year-1ととても高い不均一を示し、森林の構造とその年の気象条件によって、シンクにもソースにもなり得た。このため、森林の炭素固定量の定量的評価には、空間的な不均一性を考慮することが重要となる。本研究では、衛星リモートセンシングによって、適切な精度でNEPを評価するためのデータセットが得られることを示した。NEPの空間的不均一性の評価は、植物の生態的・環境的影響を理解する上でとても重要になる。

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