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一般講演 P2-065

富栄養化の逆説と食物網構造

*舞木昭彦(北海道大学大学院水産科学院),西村欣也(北海道大学大学院水産科学研究院)

Rosentzweigにより提唱された“富栄養化の逆説”は、環境変化に対する生態系の応答を理解する上で興味深い問題提起であった。理論的に捕食-被食系は栄養塩流入に対し不安定で、流入量が増大すれば種の絶滅は免れられないという。この逆説的予測は、実証研究の支持をほとんど得ない。そればかりか、安定化傾向まで示されている。これは理論的説明不足を意味する。

今まで提出されている逆説解消要因は、なるほど単純で一般性の高いものではある。しかし、Rosentzweigが仮定した極単純な1捕食者-1被食者系という限定された世界においてのみ通じる話かもしれない。そもそもの問題を考えれば、このような単純系を超えた世界に関心があるはずである。近年、3種系に拡張したいくつかのモデルで逆説解消要因が提唱されてきた。しかしそのいずれも以下の2点のいずれかから不十分である。(1)局所安定性に頼った解析、(2)逆説解消パタンと異なる。逆説解消パタンは、「富栄養化に伴う個体数振動における振幅の減少、最小個体数の増大」という性質を指すものであり、(1)では方法論上示すことはできない。また幾つかの研究はその点を改善してはいるが逆説解消パタン自体を示していない。

我々はこうした問題を克服し、真の富栄養化逆説の解消パタン、つまり富栄養化に伴う安定化を、7つの種間相互作用系で示した。それら食物網は3~4種(2~4栄養段階)から構成されるものであり、最適採餌行動を示す適応的捕食者により食物網構造が変化する特徴をもつ。この柔軟性と、相互作用の強弱がバランスする食物網構造が、広いパラメータ空間上で逆理解消パタンを導く。解消に必要な「強い」と「弱い」相互作用が混在した食物網は、全てのモデルに見られる規則であり、そのメカニズムは一貫している。

日本生態学会