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一般講演 P2-075

エゾクロテンの糞DNAを用いた性判定と食性雌雄差

*三好和貴, 杉本太郎, 東正剛

イタチ科は体サイズに性的二型が認められる種が多い。これは、資源を巡るニッチ分割や性選択等の適応的な要因で説明されることが多いが、はっきりしたことはわかっていない。本研究では、イタチ科エゾクロテンの雌雄における体サイズの違いが、食性の違いとして現出しているのかどうかを明らかにするために雌雄の食性分析を行った。

食肉目の食性を調べるために、糞内容を分析する手法が一般に用いられている。こうした調査では、糞の形状から種を特定することはできても雌雄の判別を行うことまでは不可能である。このため、この類の研究はほとんど行われることがなかったのだが、本研究では糞から本種のDNAを抽出し、オスに特異的なマーカーを用いた性判定を行うことで、雌雄の糞を判別し、それぞれの食性分析を行うことに成功した。

性判定に先立ち、収集したエゾクロテンの糞の表面からDNAを抽出し、雌雄に共通のマイクロサテライトマーカーを用い、PCRによって増幅を試みた。増幅が確認されたサンプルのみ性判定の対象とし、DBYマーカーによってY染色体上のDBY部位の増幅が確認されたサンプルをオス、増幅が確認できなかったサンプルをメスと判定した。205個の糞サンプルのうち性判定に成功したサンプルは79個(39%)であった。

食性分析の結果、オスはメスに比べて哺乳類と植物の利用が多く、メスはオスに比べて鳥類と昆虫類の利用が多いという若干の差が見られたものの、統計的に有意な差は認められず、哺乳類を主要な餌とする点、及びそれに次いで植物に高頻度の利用を示す点は、雌雄で共通したパターンであった。

日本生態学会