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一般講演 P2-093

ギャップサイズの違いが土壌栄養塩と植物を介して植食者に及ぼす影響

* 川瀬悟(北大・苫小牧研究林),日浦勉(北大・苫小牧研究林)

台風などによるギャップ形成は林床草本や実生・稚樹にとって光資源及び土壌栄養塩の利用可能性を変化させる。また、光・土壌栄養塩の改変による植物の形質の変化は、林床の植物をエサ資源として利用している植食性昆虫の被食パタンに影響を及ぼすことが考えられる。

以上の予測を検証するため、2004年9月に形成されたサイズの異なるギャップで光資源と無機態窒素量、木本植物2種と生活史の異なる草本植物4種(ユリ科3種、マメ科1種)の葉の形質及び被食量を2年間に渡って調べた。ギャップサイズを説明変数として、物理環境、植物形質、植食者による被食をそれぞれ目的変数にして、1次、2次及び対数モデル回帰をした後、モデル選択を行なった。

その結果、ギャップサイズの増加に伴い土壌無機態窒素量は増加する傾向があり、この土壌無機態窒素量の増加に伴い葉の全窒素量も増加する傾向が全種でみられた。さらに、木本植物は、ギャップサイズの増加に伴い葉形質のLMA、縮合タンニン量、総フェノール量、全炭素が増加する傾向がみられた。同様の反応が、マメ科草本でもみられたが、ユリ科草本ではこれら葉形質の変化はほとんどみられなかった。そのため、植食性昆虫によるギャップサイズに対する被食パタンは、植物の生活史の違いによって異なった。

ギャップサイズの違いが物理環境を改変して林床植物の形質を変化させ、さらにこの形質の変化が植食者にも影響を及ぼすボトムアップカスケードがみられた。つまり、植物の生活史よって異なる葉の形質や被食のギャップ形成に対する応答が、森林生態系の種多様性の維持に貢献していると推察される。

日本生態学会