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一般講演 P2-095

三宅島2000年噴火後に増加した植物について

*上條隆志(筑波大学生命環境),星野義延(東京農工大学農学部),樋口広芳(東京大学農学生命)

伊豆諸島の三宅島は2000年に大噴火した。火山灰の放出は2001年以降終息しているが、二酸化硫黄を中心とする火山ガスの放出は現在も続いている。本研究では、噴火前と噴火後の植生データを比較することによって、噴火後の植物分布の変化を捉えることを目的とする。

噴火前のデータは、上條ほかにより、1988年から2000年6月までに得われた植物社会学的調査データである。調査対象は主に森林であるが、一部、遷移初期の草原群落が含まれている。なお、1988年から2000年6月までの間に噴火はなかった。噴火後のデータは、2003年に三宅島の135地点で行った調査データである。調査は噴火前と同様に森林(被害林)を主な対象とした。両者にはほぼ同一地点も含まれている。

種別の出現状況について噴火前と噴火後を比較すると、多くの種は減少傾向を示した。また、ヘラシダ、ヒトツバ、ナギランなどは噴火被害が軽微な地域においても出現しなくなった。その一方で、明らかに増加傾向を示した種としては、ユノミネシダが挙げられる。本種は、噴火以前の調査では全く出現しなかったが、噴火後の調査では、18地点で出現した。また、火山ガスの影響の強い島の東部ではその群生地もみられた。本種は三宅島では1935年に採集記録がみられるのみであった。他に分布拡大傾向がみられた種としてはハチジョウススキとハチジョウイタドリが挙げられる。両種は、噴火以前から路傍や耕作放棄地に見られた種であるが、噴火後、噴火被害林に多く出現するようになった。火山ガス放出の続く三宅島では、増加傾向にある種は先駆的であるだけではなく、ガスに対する強い耐性を持つものと考えられる。その一方で、島内の希少植物の一部は、火山ガスの継続的な放出によって島内で絶滅する可能性がある。

日本生態学会