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一般講演 P2-110

シカ生息地におけるヒノキ人工林の強度間伐が林床植物の発生に及ぼす影響

渡部晃臣(愛媛大・農),*稲田哲治,中岡圭一,武智正典(愛媛県・林技),二宮生夫(愛媛大・農)

本研究は,林床植物の乏しいヒノキ人工林において,間伐をおこない,間伐強度とニホンジカが林床の木本種発生に与える影響を調べた.

2006年3月に愛媛県宇和島市津島町の林冠の閉鎖した27年生ヒノキ人工林に,伐倒間伐区(本数間伐率: 30%(BK30),45%(BK45),60%(BK60)),巻き枯らし区(45%(MK45),60%(MK60)),無間伐区(C)を設置した.各区の面積は40m×40mとした.各区に2m×2mの植生調査プロットを6箇所ずつ設置し,そのうち3箇所にシカ防護ネットを設置した.各区の光量,各プロットの斜度,各プロットにおける2006年4月〜10月の木本種の発生種数と個体数,および10月における生残数を調査し,これらの間の関係を分析した.

伐倒間伐区は無間伐区に比べて発生種数と個体数が大幅に多かった.伐倒間伐区の間伐率と発生種数の間には,一定の関係は認められなかった.間伐率と発生個体数の間には,負の相関がみられた.シカ防護ネットの有無による種数の差は小さかった.発生個体数と生残数は,ネット設置プロットが設置無しプロットに比べて大幅に多く,発生個体数は約3割,残存数は約5割多かった.伐倒間伐区における各プロットの斜度と発生種数,個体数,生残数の間に有意な相関関係は認められなかった.巻き枯らし区の発生種数,個体数,生残数は無間伐区とほとんど変わらなかった.

以上の結果から,ヒノキ人工林の間伐方法および間伐率が間伐後1年目における木本種の発生・生残に及ぼす影響について,木本種の種特性,光量,斜度,シカ食害との関係から考察する.

日本生態学会