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一般講演 P2-150

小笠原諸島母島における木本種の種子散布距離

*深澤圭太,小池文人(横浜国大・環境情報), 田中信行(森林総研)

外来植物を排除した後の群集の再生において、構成種の散布能力のバリエーションは再加入する種の組成を決定する重要な要因である。小笠原諸島母島においては、外来高木種アカギ(Bischofia javanica)が天然林に広く侵入し、在来の森林群集に対する脅威となっている。2002年から枯殺や抜き取りによるアカギ駆除が林野庁により行われており、現在作成されている環境省『小笠原の自然環境の保全と再生に関する基本計画』においてもアカギの根絶が重要課題とされる見通しである。アカギ排除後の森林再生を巡る意思決定(特に、植栽を行うかどうか)において、構成種の散布能力に関する情報は重要な判断材料となるだろう。また、それらからアカギ駆除後の森林に加入する個体の空間的なパターンを予測することができれば、よりsite-specificな対処が可能となる。本研究では、構成種の散布能力のバリエーションを明らかにし、母樹からの距離に応じた実生密度の変化を予測する種子散布モデルを構築することを目的とする。

100地点のコドラートにおいて、アカギ及び高木林主要構成種8種の実生個体数と最近隣3個体の開花・結実木までの距離を測定し、最尤法を用いて各樹種の散布カーネルのパラメータを推定した。アカギの実生密度は母樹近隣において在来種よりも卓越しており、母樹から離れても他種より高い確率で散布されることがわかった。また、在来高木種のシマホルトノキやアデクモドキは、母樹から10m以遠の実生発生がほとんど見られなかった。この結果より、アカギの侵入が進行した森林の再生においてはこれら2種の更新が進みにくいことが懸念される。また、アカギの種子散布は広いスケールで起こるため、再侵入リスクをランドスケープレベルで管理する必要があると考えられる。

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