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一般講演 P2-158

熱帯の多肉果植物と鳥の分析

*鴨井環(愛媛大・農), Oswald Braken(Sarawak Forestry Corporation), 百瀬邦泰(愛媛大・農)

私たちはマレーシア、サラワク州、ランビルヒルズ国立公園内において、果食鳥と植物の関係について調査した。調査地はほぼ季節性のない気候のため、パイオニア植物の中には、一年に多数回、繁殖を行なう植物が生育している。このような特徴をもつパイオニア植物は熱帯の果実食者にとって重要な資源であると考えられる。今回は鳥と植物の関係から、熱帯の種子散布機構について明らかにする。

私たちは鳥と植物の関係を調べるために、3つのことを実施した。1つは双眼鏡とフィールドスコープを用い、結実木の近くから、果実を食べに訪問する鳥を観察した。2つ目は、自動撮影装置を用いて、結実木を訪れる動物を撮影した。3つ目に、鳥の糞から採取した種子から、鳥が採食している果実を調べた。その方法として、カスミ網を用いて、鳥を捕獲し、袋に入れておく。1時間後、鳥の種名、体重、翼長、尾長、嘴長、嘴幅を記録し、放鳥する。鳥を入れていた袋から鳥の糞を採取し、種子が含まれているかどうかを調べた。種子の同定は調査地内の結実木の果実を採取し、植物標本とその植物の種子標本を作り、その種子標本と鳥の糞から得られた種子とを比較した。

カスミ網により、419個体(15科56種)の鳥が捕獲され、120個体(4科19種)から種子が得られた。そのうち、62%が多数回繁殖型のパイオニア植物の種子だった。ヒヨドリ科の鳥は少なくとも27種の植物を利用しており、この鳥は他の科の鳥に比べて、さまざまな林床植物を利用していた。また、タイヨウチョウ科のハナドリの仲間は、サイズの小さな種子がたくさん含まれている果実を利用する傾向にあった。

これらの結果から、熱帯の種子散布機構について考察する。

日本生態学会